メランコリック症候群
3日ある文化祭の2日目の今日は土曜日とだけあって、昨日とは比べ物にならないほどに活気で満ちていた。全く客が途絶えないことを些か疑問に思って廊下の様子を伺うと、最後尾が見えないほどの長蛇の列。何でこんな店にそれ程需要があるのだろうか。

「さ、休憩はおしまい。高橋君、次のお客さんの相手、頼んだわね」

そう言い捨てて、隣の教室に料理を取りに向かった朝倉を横目で見送って、俺はまた溜め息をつく。俺の幸せは全力疾走で逃げていくばかりだ。

無駄に凝ったのは見た目だけじゃない。演出まで実際に出向いて研究したらしく、はっきり言っていちいち面倒くさい。客の出入り口とは違う、教室の後ろ側のドアから出て、大きく深呼吸をする。マニュアル通り何度も頭に叩き込まれた言葉を、白石に鍛えられた笑顔も添えて。

「おかえりなさいませ、お嬢様方。お待たせしてしまい、誠に申し訳ありません」

見ると、客はバドミントン部の後輩達だった。にやにやと笑ったり、口を開けたまま会釈をしたり、慌てて顔を背けたりと三者三様の態度を示したが、女子バドミントン部では有名な2年の仲良し3人組だ。あぁ、羞恥で死ねそうだ。

< 85 / 123 >

この作品をシェア

pagetop