メランコリック症候群
「やばいやばいやばいやばい、俺が俺じゃなくなりそう。人格崩壊級の拷問だ、いじめだ、差別だ、迫害だ。なんだよ『お嬢様』って。きっとあんたも一般中流家庭の娘さんだよ!」

思いつく限りのことを息継ぎなしで垂れ流しにしながら壁にもたれると、慈愛に満ちた表情でメイド服を着た女子に肩を優しく叩かれた。彼女も相当精神的にきてるのか、若干やつれて見える。

「あ、おかえりー。で、注文は何?」

至極幸せそうにメレンゲだかホイップクリームだかを作りながら、エプロン姿の宏が歩み寄ってきた。その笑顔が無性に腹立たしくて、その頬を思いっきり抓りたいと妙に冷静な頭で考えてしまう。

「アールグレイ、カモミール、ミルクティー。ケーキセットを3つだ」

近くにあったパイプ椅子にリングで燃え尽きた某ボクサーよろしく座り込み、深い溜息をつく。俺の言葉を聞いて3段トレーに色鮮やかなケーキを鼻歌交じりに並べる宏を心底羨ましく思いながら、俺は文化祭が後何時間あるのかに思いを馳せた。明日も後夜祭まで入れると、せいぜい折り返し地点を通過したところだろう。

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