メランコリック症候群
でも、何故こんなにも暑いのに冷たいアイスやかき氷じゃなくて、火傷するほどに熱いたこ焼きや焼き鳥が食べたくなるのだろうか。冬にこたつの中でアイス、夏に扇風機をかけながらの鍋が食べたくなるのと同じ心理か?

我ながらに非生産的な疑問にエネルギーを費やしていることを馬鹿らしく思いながらも、考えることをやめられない。脳内麻薬が出ているかどうかは知らないが、何故か楽しいのだ。

駆け足になりながら視界をちらつく3年D組の看板を目指す宏の背中を見失わないように早歩きで前進しながら、俺は隠しもしない周囲からの好奇の視線を一身に浴びているのを感じていた。

余程この燕尾服が目を引くらしい。着替えてくれば良かった。恥ずかしいし、暑いし、重いし、ろくに良いことがないじゃないか。

「よーっ!悠里、来たぞ~!」

恥ずかしげもなく大声で叫ぶ宏に思わず他人の振りをしたくなりながらも、俺は彼の隣まで足を進めた。露店の奥からしかめっ面で出てきた美月を見れば、額に玉の汗が浮かんでいる。クラスで統一したらしい水色のTシャツには、一体何があったのかは分からないが、裏番長と太く書かれていた。


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