メランコリック症候群
「……いらっしゃーい。A組は儲かってるんだって~?」

随分と覇気がなく疲れの色を滲ませて、美月は目の前のたこ焼きをくるりと器用に回した。食欲をそそる音と香りに腹の虫が騒ぐのを感じ、何となく恥ずかしくなる。

「儲かってるぞ~!ダントツ1位決定だもん。な、楓」

ほくほくと嬉しそうに顔を綻ばせながら言う宏に軽く頷くだけの返事を返して、俺はベストの内ポケットから財布を取り出した。腹が減っては戦はできぬ、とはよく言ったものだ。現に俺は美月が回すたこ焼きや、その隣で香ばしい香りを撒き散らす焼きそばに完全に現を抜かしている。恥ずかしいくらいに食欲が湧いてきて、まともに返事をするのも嫌になるほどだ。

反応が気に入らなかったのか口を尖らせる宏は軽く無視をして、俺の頭の中では激しい葛藤がそれこそ戦のように繰り広げられていた。

さて、どうしたものか。
焼きそばもたこ焼きも出来立てのアツアツ。そのまた隣では焼き鳥も焼かれている。たこ焼き大きいな。焼きそばもソースが物凄く良い香りだ。あー……焼き鳥は丁度大好物のつくねが焼かれているし。ん、チーズたこ焼き?すげー旨そう。

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