インテリと春

プロローグ

人は

泣いたり苦しんだりすることで成長するものだと聞いたことがある


辛いだとか
怖いだとか
悲しいだとか

そう感じるのは生きている証だと
聞いたことがある


もしもそれが本当ならば

あたしに与えられた“生きている証”は
あまりに重過ぎて
あまりに多過ぎて

生きていく前に押し潰されてしまうだろう


春なのに

あたしは生きているのに
降り止まない雨の中で
押し潰されてしまう


そんな人生の図面上に忽然と現れた人は

まるで太陽のようで
温かな春のようで


けれど


太陽は

降り出した雨には決して勝てない


勝てなかったんだ



『インテリと春』