インテリと春
翌日。珍しくも1限目と2限目の間に登校してきたあたしへ、アケミがいの一番に掛けてきた言葉は、お弁当ちゃんと持ってきたかなマユコちゃん?という幼稚園の先生さながらのもの。
「何それ。とりあえず笑えばいいの?」
「ヨーグルトだけじゃお腹いっぱいにはならない!それを昨日学んだでしょーが」
「あー成る程ね」
教材などひとつも入れられていないカーキ色の鞄から小さな弁当箱を出してみせる。それを確認した彼女は大層満足げに笑って「今日はお天気が良いから屋上で食べましょうねー」と何故かあたしの頭を撫でてきた。おかげで長時間を費やした髪型はやや崩れ気味に。
「ところで珍しいじゃん。こんなお早い登校の理由は?」
「今月分の現国のレポート出してきた」
「は?ちょっと待てよ!つまり安田に会ったってことすか!?」
「そうなるね」
「えーあたしも連れてけよー!バカマユコー!」
登校したその足で直接職員室へ向かったのだからしょうがない。一応宥めてはみるものの、今度は幼稚園児のように駄々をこねて手をつけられなくなるのがアケミだ。何度も「畜生畜生」と繰り返し、たった一人で窓際に向かったかと思うと、やすだー!なんて朝から愛を叫んでいる。
正直見ていて全く飽きない。むしろあたしは面白いので、もっとやれと煽りたくなるくらいだ。