インテリと春
「ねえマユー安田んとこ行こうよー」
とぼとぼとこちらへ引き返して来ながら悲しげにアケミが呟く。次は2限目、外来語か。一度机へ下ろした鞄に弁当箱をしまい直し、再度手に持って教室を後にしようとするのは自分の両足。
「安田、職員室に居るか分かんないよ」
「それなら見付けるまで探す!恋する乙女は一生懸命なのだー!」
「分かったからデカい声出すなって」
恋も結構だが授業も一生懸命やりなさい。あたしが人のことを言えた義理ではないけれど、履き潰して廊下の向こうに吹っ飛んでしまった上靴を慌てて追い駆けていく友人の背中に目で訴えた。
「それにしても、昨日の今日でノルマ5枚以上のレポートを提出するとはねえ」
「あんたも出せよ」
「さすが中川マユコだ」
五月の半ば。本日快晴。暖かい陽気に包まれている廊下をぶらぶら歩く二人は、とある男性講師になんとなく恋い焦がれ、今日も笑顔は絶えない。