インテリと春

「ごめんね安田~また明日会おうね~」

「気ぃ失って欠席せんことを祈るよ~お大事に」

さながら腫れ物扱いのようなクラスメートの視線をものともせず、腰の抜けたアケミと自分の鞄を抱えて教室を出た。

廊下には淋しい程人の気配がない。それは授業中ということも勿論起因していると思うが、日中にもかかわらず窓の外からの光がやけに弱小であることも追々重なっているんだろう。

空が怒っている。そんな気がした。

「あーなんでこんな目に遭わなきゃなんないの…あたしなんか悪いことした?雷さま怒らせるようなことした?」

「そんなもん日常茶飯事でしょあんた。今も現在進行形だし。それから雷さまなんて居やしませんよ、アケミさん」

この時期に鳴る雷は、いわゆる春雷という物に当てはまるんだろうか。どうせ春と書き表すくらいなら、桜のひとつでも連想させるつもりで薄紅色の発光色を帯びていればいいのに。雷の色はどれもこれも、同じ色を発している。

「…うげえ、気分悪くなってきた」

依然として続く雷鳴に怯えながら、ゆっくりと歩を進めようやく昇降口まで到着。

「うわ最悪!ビニール傘とか思いっきり雷落ちてくんじゃねーの!?ねえマユ!」

「怯え過ぎだってあんた。自分で疲れない?」
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