インテリと春
中川マユコ
“頭が良ければそれだけで贔屓されるんだろ?”
中学の頃にとある男子生徒から言われた科白。
それがあたしの脳裏に今でもしつこくこびり付いていた。
特に雨降りの日となると、まるで壊れたラジオのように頭の中を反響する。
これは決してトラウマなんかじゃない。
自分がそんな物に足を絡め取られているという事実を、あたしは受け入れたくなかった。
そんな事で誰かに頼ろうとする自分を、振り払いたかった。
もしもその“誰か”に寄り掛かってしまった時、いずれ「お前は面倒だ」と突き放されてしまうことが恐ろしくて。
「あんたは小食過ぎだ」
そうこうしているうちに、いつの間にか人の輪に混じることを忘れてしまった自分。
そんなあたしにも、高校へ入学してようやく寄り掛かれる“誰か”を見付けることが出来た。
まさしくそう、寄り掛かってしまえば軽く共倒れでもしてしまいそうな友人。というのはほんの冗談だけれど。
「ちゃんと食べないと身体蝕まれるよーマユコ」
「…蝕まれるって何?もっとかわいい言い方出来ないのかよ」
彼女の名前は吉野アケミ。何事にも体当たりな性格で、よく勉強の出来る奴なくせに、違った意味で相当バカな友人である。こうしてつるむようになったそのキッカケも、本当に馬鹿馬鹿しいものだった。