インテリと春
ひとつは、一人暮らしに憧れていたこと。
「吉野って、家どこら辺?」
二つ目は、親の脛をかじらず自分で生きてみたかったこと。
「この街の駅から二つ先の辺り」
三つ目は、もう“あの近辺に居たくなかった”ということ。
「お前は?」
「…何が」
「お前の家」
「ああ、あたし高校に上がってから一人暮らししてんの」
「ほー大したもんだ。お前らしいと言えばお前らしいけど」
安田の言う「あたしらしい」とはどういう人間像なんだろうか。事ある毎に憎まれ口を叩く問題児?とことん意地を張った一匹狼?思い浮かぶのはどれもこれもマイナスなことばかりで、柄にもなく少し落ち込んだ。元からの性分は直しようがないけれど、あたしだって安田の目に映りたいとは思う。
「なんつーか、お前等って変わってるよなあ」
「新任のくせに髪染めて堂々とやって来たあんたには言われたくない」