インテリと春
「あ、そういや忘れてた。浅井先生がお前のこと探してたぞ」
「浅井?担任の?なんでまた」
「ん~三者面談の知らせがどうとか…そんで黙ってお前等を帰らせた俺は見事に怒られました」
「浅井は38で未だ独身、比べてあんたは女子もたかる新米講師の26ときたら、疎まれてもしょうがねーだろ」
「ここに来てまだ一ヶ月ちょいしか経ってねえのに、もう嫌われてんのかよ俺」
不安げに眉を寄せる一方で、食後の一服と言わんばかりに堂々と煙草を吸い始めた新米講師。新任式にも遅れるような体たらくに加えてその態度じゃあ年齢云々以前の問題かもしれない。このまま天井のスプリンクラーが作動しても知らねーぞ。
「まあとりあえず行った方がいいんじゃねえの」
「浅井んとこに?意味ないって」
「んなことねえよ。行って話するだけしてこい」
「…面倒だとか、そういうんじゃないんだよ」
おにぎりの包み紙を手のひらの中でぐしゃりと潰す。あたしは安田との会話に答えながら、周囲をきょろきょろ。視聴覚室のごみ箱はどこにあっただろうか。