インテリと春
面倒という名の自由
「視聴覚室!?だったらこんなとこで呑気に弁当なんか食ってる場合じゃねー!」
後日。案の定なアケミの反応に思わず腹を抱えて笑ってしまった6月の初め。とうとうあたしの苦手な梅雨も、早く片足を突っ込めと言わんばかりに眼前までやって来てしまった。
それと同時に、衣替えの時期も訪れ、暑苦しい冬服から夏服へと変わる。生徒は勿論のこと、教師もまた然りだ。そして毎年その度に男性教師の夏服姿を見掛けて思うこと。ワイシャツの下に身に着けているランニングが透けていて物の見事に気持ち悪い。全国の女生徒はどのように思っているのか分からないけれど。
「やすだあああ!」
「おーう吉野、今日も一段とやかましいなオイ」
「うるせーよ。それより見て見て!ほら!」
「…ほら?」
「ほら!」
マラソン大会というよりも短距離走のような。そんな走りっぷりで、食べかけの弁当を片手に突如視聴覚室へと押しかけたアケミは、さながらウエディングドレスでも披露するかのように安田の目の前でくるりと回ってみせる。ただひたすらに「ほらほら見て見て」と繰り返しながら。
「気付いた?バカ教師」
「全然」
「うーわ最低!どう見ても気付くだろフツー」
「…中川、ワリーけど解説を頼む」
「夏服だよ夏服。今日から衣替え」
「あ~成る程」