インテリと春
何度も言うように、自分達の通う高校は地方でも指折り数える程の名門校。偏差値は目がくらむとまで言われ、要するにインテリ中のインテリしか集まらない。そんな高校ともなれば、毎月義務付けられている全教科のレポート提出、毎月行われる定期試験などなど。馬鹿馬鹿しくてやっていられないことばかりが溢れ返っているのだ。
それでも、この高校を選んだ理由。
「…面倒だとか思ったりしないの?」
一人暮らしをしたかった。親の脛をかじりたくなかった。“あの場所”に居たくなかった。
「そりゃあ面倒でしょ。提出ギリギリのあんたが一番分かってるくせに」
“あの場所”から離れてしまいたかった。そう必死に願い続けていたあたしに、父が言った一言。
“成績さえ良ければそれでいい”
これ以上はない自由を与えられたのだと初めは思った。しかし、やがて気付くこと。父は“あたしが面倒になった”のだ。側に置いておくことが、保護者としての役割が、面倒になった。だからそんな安い口車に乗せて、あたしが遠く離れた場所に行くことを許したのだろう。許すという優しい残酷さで、あたしを突き放したのだろう。
母さんのように。
「大した努力家だよあんたは。こっちが泣きそうになるくらいにね」
「…でしょ?」