青空〜aosora〜
そんな事、思いながら花火を見ていたら

花火もフィナーレに向かって行った。

今日、一番大きい花火が、上がる。

夜の闇の中

花火が生み出した光は

隣のキョウコの顔をオレンジに染める。

『行こうか』

もう、花火が上がらないのを悟り

キョウコが俺に帰ろう、と促す。

『うん、そうだね』

そして、帰り道。

神社の参道に近付くにつれ

祭り帰りの人で

道は少しずつ、混雑する。

気がつくと、キョウコは。

俺のTシャツの裾を

小さく握っていた。

それに気付き、振り向くと

『迷子になっちゃいそうだから』

照れくさそうにそう言った。

その手を握ってあげられるのは

俺じゃない。
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