青空〜aosora〜
『ユキ』

俺が話しかけると。

ユキは笑顔で返す。

『ユウ、あの唄、あたし?』

他に誰がいるって言うんだ。

『うん』

やっぱり、こうして。

目の前に立たれると、照れる。

視界の隅にさっきの女子高生が

こっちを見て何かひそひそ言ってるのが映る。

『ちょっと、出ようか。

 外の空気、吸いたい』

俺はそう言うと、防音扉をあけ、

ユキの手を取り逃げるように

ライブハウスから飛び出した。

地下から地上へ向かう階段を上がるうちに

ライブハウスの音は少しずつ遠ざかる。
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