たんぽぽ
 実は、このリボン館は基本的に高校生からしか受け入れなかったのだが、僕の両親の親戚が経営していることから特別に許された。その親戚が僕の面倒を見てくれるというので僕はこの学校に無事入ることができたようなもので、そうでなければ、僕の両親もさすがに中学生で親元を離れることを許してはくれなかっただろうし、まだその当時あまり普及していなかった携帯電話を持たせてくれることもなかっただろう。

 三年目の部屋はものがあふれかえっていた。

 まず、入り口には鮮やかな藍染めされたのれんがぶら下げられ、扉は常時開いていた。中に入るとフローリングの床の上には一面クリーム色のカーペットが敷いてある。部屋の手前にこたつ机があり、その左横の壁沿いに三段の本棚が三つ並んでいた。その本棚の中には三年間で買い溜めた何百冊のマンガが所狭しと敷き詰められていた。こたつ机の右横には押入れがあったが、中に何が入っているのかはごちゃごちゃしすぎて本人でさえ把握していなかった。その横にはクローゼットがあり、中には多くの服がハンガーにかけられていた。左奥に勉強机があったが、机の上は教科書やらプリントやらが山積みにされて、ほとんど機能していなかった。その勉強机と本棚にはさまれるようにして冷蔵庫があり、その上には電子レンジがのせられていた。右奥には備え付けのベッドがあり、そのベッドの上には壁から突き出た棚があり、その上には大きな鏡と整髪料が並び、その横には買ったばかりのMDコンポが光っていた。そして、その棚の上も統一感がなくごちゃごちゃで、散乱した多くのCDやMD、何かの付録であろう、たくさんの見たこともないキャラクターマスコット、ボロボロの携帯ストラップ、いつどこのゲームセンターでとったかも忘れた人形達、ちぎれた制服のボタン、何冊もの読みかけの小説、その他多くのもので棚の上は隙間なく埋められていた。部屋の正面の大きな窓にはベージュのカーテンがつけられていて、その窓からはリボン館の前の細い道が見えた。

 僕はこの部屋に住み、この部屋から毎日学校に通った。
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