たんぽぽ
「そっ、そうなんだ…。へーッ…」

 この次の言葉が出てこない。

『うん…』

 春華も気まずそうに答える。

「そっか…」

 頭が真っ白だった。

『…』

 春華は何も言わない。

「あの…、あのさ」

『うん…』

「あの…。ちょ、ちょっと待って」

 フーッと深呼吸しておもいきって言った。

「あの…、もしよかったらさ…。俺と付き合ってくれない?」

 心臓が激しく動き、少し痛い。顔も耳も熱い。

『…。えっと…。返事…、明日でいい…?』

「エッ…。うん、全然いいよ」

『じゃ、じゃあ明日返事するね』

「うん…。わかった。今日はいきなりごめんな」

『ううん。大丈夫。じゃあ、また明日』

「うん、また明日。バイバイ」

『うん、バイバイ』

 電話の向こうでガチャリ、ツー、ツー、ツー、と電話が切れた音がしていた。僕の頭の中は真っ白でしばらくその音を聞いていた。

「どうだった?」

 友達が一斉に聞いてくる。

「明日まで考えるってさ」

「じゃあ、見込みあるじゃん。俺ははじめからそう思ってたんだ。よかったな。」

 英男は根拠のないことを言いつつ、得意げだ。

 英男の考えによると、見込みがなければその場でふられるということだったが、見込みがあればその場でOKの返事がもらえるとは思わないのだろうか…。

 英男も僕のことをよく知っていたのかもしれないが、僕も英男の性格をよく知っていた。こいつは調子のいいことは言うが責任感が強く、しっかりしている。そして、こいつが全く見込みがない告白を僕にさせることがないということも。

 僕が告白を終え、放心していると、周囲の友達は口をそろえて言った。

「つーか、高嶺すげぇな!ほんとに告白するんだもん」

 みんな驚いていた。僕は当分の間、何も考えることができず、やけに熱をもった顔と耳を触ったり、だんだんと遅くなっていく心臓の鼓動を感じていた。春華の返事は全く予想できなかったため、友達が帰った後も落ち着くことができなかった。

 次の日の放課後、僕は春華に呼び出された。教室から誰もいなくなり、二人きりになるのを待った。
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