ジキタリス
『あ!そうだ!今夜うちにいらっしゃいませんか?』
入江は被っていたハンチングを整えて、夕飯ご馳走します、と笑った。
『美都子は、あっ、妻は料理が得意なんです』
入江は照れながら、新婚なもので、と汗を拭いた。
『秋田の人なんだろう。きっと秋田美人なんだろうね』
塚原がそう言うと入江は眼鏡を曇らすほどに顔を真っ赤にしてしまった。
――微笑ましいな。
塚原は久々に爽やかな気持ちになった。
夕飯期待してるよ、と塚原は入江に言って署の中階段の前で別れた。

< 3 / 9 >

この作品をシェア

pagetop