ジキタリス
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『あ、警部!』
昨日はすみませんでした、と入江は頭を掻いた。
『仕方ないよ。ここのところ仕事が多いからね。昨日はご馳走様』
『お食事、お口に合いましたか?』
もちろんといった顔をして塚原は言う。
『絵に描いたように幸せな生活だな。羨ましいよ』
『そんな、ただ僕は美都子、いえ、妻が尽くしてくれているからやっていけるだけなんです』
こんなに妻に対して誠実な男も居まいと塚原は思った。
『じゃあまた』
そう言って塚原は資料庫へ向かった。
先日死んだ清水の事件を調べるためだった。
いろいろな事件の資料を集めているとたまたま資料庫にあった他の資料に入江満の名前を見つけた。資料は随分新しいものだった。
――入江もなにかの事件に巻き込まれていたのか。
資料の中には当時の入江家の戸籍も入っていた。
ペラペラとその資料をめくるうち、塚原は戦慄を覚えた。