澄んだ瞳に
車が動き出すと、智香が淳に挨拶をした。
「井上智香です。先日はありがとうございました。」
そういうと、淳がルームミラーで、智香の顔を確認した。
「……あ〜…」
ルームミラーに、淳の顔半分が映ってる……
私は、ルームミラー越しの淳の顔に、うっとりしてしまった……
それを、透かさず淳に突っ込まれる……
「……何、看取れてんだ…?」
私は、恥ずかしくなり、顔を横に向け、窓の外を、サッと見た。
すると、お兄ちゃんまでが
「何?何?澪が鼻血出してるって……」
と、からかう……
また、やられたよ……と心の中で言った。
「っつーか、何で、悠哉がそこに座ってんだ!そこは澪の席に決まってんだろが……!」
と、淳が言った。
お兄ちゃんは、淳の隣…助手席に座っていたのだった…
「……澪の席?どこにも澪の名前なんか、書いてないぜ…」
と、お兄ちゃんが、助手席の辺りをキョロキョロ見ながら言った。
「……どこの世界に、助手席に、ここは澪の席。って書いてる奴がいるんだ!」
と、淳がやり返した。
「いやいや、書いててくれねぇと、わかんねぇだろ……」
と、お兄ちゃんも負けてはいなかった。
「……?お前と話してると、こっちまでが頭おかしくなっちまうぜ……」
と、淳が言った。
「それは、こっちのセリフだぜ……」
私と智香は、目を合わせた
すると、智香は
『ただの、バカ?』
と、口パクで言った。
そして、私も……
『たぶん……』
と、口パクで返した。
「……そこの二人、何バカバカ言ってんだ!」
と、淳が、ルームミラーを覗き込むようにして、言ったのだった。
「『…………………。』」