澄んだ瞳に



「……それはそうと、さっき、智香ちゃん、淳に礼を言ってなかったか…?」


と、お兄ちゃんが切り出した……


智香は、それに答えて、


「……はい、言いましたけど、何か……?」


と、言った。



すると、お兄ちゃんは、


「……って、淳と智香ちゃんは、顔見知り?」


と、言った。



忘れてた……


お兄ちゃんには、淳に助けてもらったこと、話してなかったんだ……



「……はい、以前一度お逢いしたことが……」


と、智香が答えた。



「……あっ、そうなんだ……で、どこで逢ったの?」


「……そ、それは……」


智香は、言いにくそうにしていた。



すると、淳が言った。


「……んなの、どうだっていいだろ……」



「……あーっ、それって、何か疚しいから?澪の前では、口が割けても、言えねぇってこと……?」


と、お兄ちゃんが言った。


「……んなんじゃ、ねぇよ……」



「……だったら、教えてくれたっていいじゃねぇか……」



「……なこと、お前にいちいち言ってどうなる……」


「……どうなるって……」


「だろ……」



「あ〜……でもよ、気になるじゃねぇか……澪だって気にならねぇか?」


と、お兄ちゃんが、私に振ってきた……


「……えっ…?」


聞いていなかったわけじゃなかったけど、急に振られて、なんて答えたらいいのかわからなかった。それに私も、その場にいたのだったから……



すると、お兄ちゃんが、言った。


「……ほら、みろ……澪だって、知りたがってるじゃねぇか……」



「……私、何も言って……『……いいから…、なっ?ここまで来たら、話せよ、淳……』


お兄ちゃんは、私が言いかけた言葉を遮って、淳に言ったのだった……




すると、淳は渋々ではあったが、お兄ちゃんに話出したのだった……





< 121 / 277 >

この作品をシェア

pagetop