澄んだ瞳に
車が向かった先は、ベイサイドに建つ、ホテルだった。
ホテルの玄関先に、車を止めると、ドアマンが近付いて来た。淳は私たちに車から降りるように促し、車を預けた。
淳の後を着いて、ホテルの中に入り、進んで行くと、ホテルマンたちは、その場で、淳に深々とお辞儀をしている。
そして、支配人らしき男性が、淳の姿を見るなり、近付いて来て、淳に挨拶をしようとするのを静止して、「今日はプライベートで来てるから…」と言った。
お兄ちゃんが、
「さすが、社長だね!」と言ったので、私は、ここが矢崎グループのホテルだということに気付いたのだった。
そして、私たちは、さらに奥に進み、エレベーターホールで、エレベーターが降りて来るのを待った。
すぐにエレベーターが来たので、乗り込むと最上階へ。
エレベーターを降りて、ふかふかの絨毯の廊下を歩き、進んで行くと、淳が足を止めた。
【Sweet Room】
淳が鍵を開け、ドアを開け、私たちを先に中に入れた。
私たちの目に飛び込んで来たのは、一面に広がる海だった。
「『すっご―――っい』」
私と智香は、声を揃えて言った。
絶景のパノラマに看取れていた、私たちに
「突っ立ってねぇで、座れば?」
と、淳が言った。
私たちは、体全体が沈み込むようなソファーに腰を掛けた。
淳が、タバコに火を着け、ゆっくり吹かす
Zippoのオイルの匂い……
淳のタバコの匂い……
久しぶりに嗅ぐ匂いに、私は、フーっとなってしまう
「まだ時間あるし、先に飯にすっか?」
と、淳が言うと、部屋に食事の用意をするように、連絡した。