澄んだ瞳に
「あいつ……。」
独り言のように呟いた男の人は、眉間にシワを寄せていた。
「助けていただいて、ありがとうございました。」
「ありがとうございました。」
智香と私がお礼を言うと、眉間にシワを寄せていた顔から、微笑んだ顔に変わった
「家まで、送ってやるよ…」
「『…………へっ?』」
無理もない。
さっき、家まで送ると言われ、無理矢理に連れ去られそうになったばかりなのになんてことを言うんだろ、この人……
きっと、人格疑われるんじゃない?
そんな風に思った、たぶん智香も……。
「何もしねぇって。さすがの俺でも、二人相手には何も出来ねぇしな……」
さすがの俺でも?
さすがって、何?
何もしないって……?
ますます、不安になる。
「同じめにあっても、今度は助けてやらねぇー…」
さぁ、どうする?と尋ねるように、二人の様子を伺っている。
ものすごい威圧感のようなものが伝わってきていた。
「……じゃ、お言葉に甘えて……」
……え――っ!?
いいの〜?
智香〜 (泣)
不安になってる私の手を、智香がギュッと握った。
澪、大丈夫だよ。と、言っている気がした。
「じゃ、決まりだな……」
そういうと、着いておいでというように、男の人が歩きだした。