澄んだ瞳に
私の体も、すっかり良くなり、ベンチを立つと、宛もなく歩き出した。
少し歩くと、外国の物語に出てくる客船が、目に入った。
「あれなら、いけっか?」と、淳が、客船を指差しながら聞いた。
「うん!」
と、返事をした。
そして、客船に乗り込むとすぐに出港した。
私たちは、2階のデッキに上がった。
船はゆっくりと進んで行く
心地よい爽やかな風が、肌に当たる。
私の横にいる淳からは、ほのかな香水の匂いが、流れてくる……
私の髪の毛が、フワッと靡く……
とても気持ちが良く、爽やかな気分。
お互い前を向いたままだった。
「澪…」
と、淳が急に、呼んだ
「……何?」と、聞く。
「来週の日曜日、挨拶に行くつもりだ……」
「……えっ?」
「おじさんと、おばさんに、俺たちのこと、きちんと話さねぇとな……」
「……うん。」
淳は、ほんとに私たちのことを、きちんと考えてくれている。
物凄く、嬉しかった。
私は、心から
「ありがと、淳」
と、言った。
「それと……」
「まだ、何かあるの?」
「あ〜……。」
も〜、勿体振らないで。
さらに、聞いた。
「何……?」
「長期の休みが、取れそうだ。」
「ほんと?」
私は、長期の休みと聞いて、何かを期待してしまった。
「あ〜……。」
だから、勿体振らないでってば……。
思わず、口から出そうになる。
でも、それ以上、何も聞けなかった。
何かを期待していると、思われるのが、嫌だった。