澄んだ瞳に
入り口で淳が、「予約した矢崎ですが…」と、言うと、席に案内された。
店の正面には、大きな舞台が設置されていて、いくつものセットが配置されている。
一番前の、丸いテーブルに案内されて、私たちは座った。
席に付くと、智香が、口元を隠しながら、そっと耳打ちをしてくる。
「ねぇ…このお店って、キャラクターのショーを見ながら食事が出来るんだけど、朝一に予約しないと、入れないぐらい、人気があるんだって…」
「えっ、そうなの?」
「うん。ここで食べたっていう、友達から聞いたから、間違いないよ。」
「じゃ、誰が予約したの?」
「たぶん、矢崎さんだよ」
常に私と一緒だったから、あり得ない……。
一度、はぐれたけど、少し前のことだった。
じゃ………
「……いつ?」
「入場してすぐに、トイレに行った時じゃないかと思うんだけど……」
私は、思い起こしていた。
確かに、トイレに行くと言って、私たちから離れた。
その時に……?
淳は、内緒にしておいて、喜ばせてくれようと、してたんだ。
淳の気持ちに、胸が熱くなった。
すると、私たちの様子を見ていた、お兄ちゃんが
「何コソコソ喋ってんだ?智香ちゃんを俺に盗られて、やきもちか?」と、言った。
私は、ジーンと胸を熱くしているというのに、デリカシーというものが、ないのですか?と言ってやりたかった。
「もぉ〜〜〜。」と、お兄ちゃんに一言だけ言って、また口を尖らせた。
すると、すぐにお兄ちゃんの突っ込みが入った。
「淳、見ろよ、この顔!この間、お前に言っただろ?この顔だよ、この顔…」と言って、笑った。
すると、淳までもが
「既に、写メで撮った。」
と、言った。
マ、マジですか……?
いつの間に?
と、思っている私に、淳が
「真に受けてんじゃねぇよ。」と、言って、頭を、チョンと突いた。
すると、私以外のみんなが笑った。
智香まで笑うことないじゃない!という、思いをこめて、ジロッ!と睨んでやった。
すると、智香だけが、笑うのを止めたのだった。
ほんと、私って、淳とお兄ちゃんの、いいカモだよね………。