澄んだ瞳に
第四章
ほんとは、小心者のお兄ちゃん
帰りも、淳に送ってもらった。
智香の家に行き、その後、私たちの家に行ってもらった。
お兄ちゃんが、家に寄るか?と誘ったが、明朝一番の役員会議の資料に、目を通さないといけないからと言って、帰って行った。
きっと、この二日間、淳の仕事が、後回しになっていたんだろうと、思った。
家の中に入ると、パパたちは、先に寝たのか、玄関以外は、真っ暗だった。
お兄ちゃんが、先にお風呂に入り、その後、私が入った。
お風呂から上がると、リビングの電気が付いていたので、ドアを開けて、覗いてみると、お兄ちゃんが、ビールを飲んでいた。
「お兄ちゃん、まだ起きてたんだ。」
と、私が言った。
お兄ちゃんは、タバコに火を着けて、一服吸うと、
「この週末は、楽しかったな……。」と、言ったので
「そうだね。」
と、私は答えた。
その後、お兄ちゃんは何も喋らなくなった。
私は、ずっと気になってた智香とのことを聞いた。
すると、お兄ちゃんは、今日の智香との間のことを、話してくれた。
智香が、お兄ちゃんのことが、好きだなんて、全然知らなかった。
いつから、お兄ちゃんのことを想っていたのだろうか………。
智香に聞いてみよっと。
そして、私は、素直な気持ちで、お兄ちゃんに言った。
「良かったね、お兄ちゃん………。」
でも、お兄ちゃんの反応がなかった。
お兄ちゃんは、ただ一点を見つめたまま、呟くように言った。
「ほんとに、良かったのかな………。」
お兄ちゃん………。
なんで、今さらそんなこと言ってるの?
さっきまでの、お兄ちゃんは、どこに行っちゃったの?