澄んだ瞳に
ヒロが、俺に頭を下げ、連中を引き連れて、人混みに紛れて見えなくなった。
俺が助けた女子高生が近付いてきた。
『助けていただいて、ありがとうございました。』
「あ、ありがとうございました。」
俺に礼を言うと、二人は顔をあげた。
……………澪!?
二人をよく見ると、清南高校の制服を着ている。
俺の親父は、清南高校の理事長を務めている。
俺も、親父も、清南高校の卒業生でもある。
2年前の春、俺は、親父の代理で、清南高校の入学式の来賓として、参列していた。
俺が絶対的信頼をおいている、奥園悠哉の7つ年の離れた妹が、入学すると、聞いていた。
奥園悠哉は、清南高校の同窓生で、悠哉の存在なしでは、今の俺はいなかったと思っている。
学生の頃、よく悠哉の家に遊びに行った。
初めて澪と逢ったのは、俺が16歳、澪が9歳の時だった。
澪を見たのは、初めて逢った時の日の、1回だけだった。
俺が悠哉の家に遊びに行く時間が、いつも9時を過ぎていた。
まだ9歳だった澪は、いつも寝ていたのだ。