澄んだ瞳に


『澪ー…いるんだろー?』

『智香ちゃ〜ん…返事してー』


女子更衣室の外から、淳とお兄ちゃんが私たちを呼んでる声がした……



私たちは、泣くのを止めた

「どうする……?」

と、智香が言った。


「智香は……?」


「……ヤキモチ焼いたって、思われたくないから、とりあえずは返事する…」

と、智香は答えた。


私も同じ気持ちだったので、うん。と頷いた。


そして、智香は言った。

「私も澪も、ここにいるよ〜」


すると、お兄ちゃんが

『だったら、二人とも出て来いよー』

と、言ってきた。


私たちは、水着の上に、Tシャツを着て、顔を洗った……さっきまで泣いてた目は真っ赤で、顔を洗っても、隠せなかった。


「誰が見たって、泣いてたってわかるね…」

と、智香が言った。


そして、二人で目が合うと、クスッと笑った。



二人で、更衣室を出た。



私たちの様子を見て慌てたのだろう…二人とも体を拭ったバスタオルを首に掛けたまま、立っていた。


「二人でいきなり走って行くから、ビックリしたぜ」
と、お兄ちゃんは何もなかったかのように言った…


何を白々しいことを言ってるのかと、憎らしかった。

智香は、そんなお兄ちゃんを睨んでた。

智香に睨まれたお兄ちゃんは、智香に「ごめんな、智香ちゃん」と言って、謝った。


すると、淳は、私の肩をそっと抱き寄せて、耳元で言った。

「ヤキモチ焼いたか…?」

淳のバカ!と、言ってやりたかった。

智香のように、淳のことを睨むことも出来ない…


すると、淳がもう一度言った…

「どうなんだ…?」


淳の意地悪と言おうとして、淳の顔を見上げた。すると、淳の胸元には、私にプレゼントしてくれた、ペアのネックレスがぶら下がっていたのに、目が止まる…

私がそれに気付いたとわかった淳は、身を屈め、ヘッドを掴むと、私の胸元に近付けた…


男の子と女の子

『ハート』になった。


淳は、ニッコリと微笑むと私のほっぺに、チュッ!とキスをした。



そして、私たちは、またプールに戻った。



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