澄んだ瞳に
「おーい!さっきから何やってんだ?」
淳とお兄ちゃんが、ボードを担いで走ってくる。
そして、私たちのところまでくると、女たちの間に割って入った。
「あんたたちか…俺たちの彼女に何か用?」
お兄ちゃんが言った。すると後から喋った女が言った
「何言ってんの?あんた昨日は、俺の妹って、言ったじゃん!」
「俺の妹はそっち、で、こっちが俺の彼女」と言ったお兄ちゃんが、智香の肩に手をかけた。
「じゃ、この人は?」と、淳を指差して、最初に喋った女が聞いた。
「俺?…俺は、こいつの彼氏」と、淳が言って、私の肩に手を置いた。
「じゃ、最初から、そう言えばいいじゃん!」と、後から喋った女が、膨れっ面になって言うと、お兄ちゃんが、「俺は、妹と…って言った途端、あんたたちが勝手に早とちりしたんじゃねぇの?」と言った。
「だったら、私たちと遊ばなきゃいいじゃん!」と、女が言い返してきた。
すると、淳とお兄ちゃんが、二人で目を合わした。
「それは……」と、お兄ちゃんが言うと、女が「何?」と聞いた。
「あんたたちには、関係ねぇ話だ……わかったら、二度とこいつらに近付くな!」と、淳が言った。
すると、二人は、「行こっ!」と言って、ホテルへ帰って行った。
二人が行った後、智香がお兄ちゃんに聞いた。
「さっき、あの人たちに言った、関係のない話って、一体なんだったの?」
すると、お兄ちゃんは、「それは言えねぇな。」と言った。
「お兄ちゃん!!」と、私が睨んで言うと、観念したのか、口を割った。
「お前らに、ヤキモチ焼かせてやろうって、淳と相談してやった……」
私は淳を、智香はお兄ちゃんをそれぞれ睨んだ。
淳たちは、「わりぃ、わりぃ」と言いながら、ボードを担いで、また波へと向かったのだった。
「はぁ…やっぱりやられちゃったね…あの二人に」
と、智香は言った。
でも、私は、それで良かったと思った。何故なら、淳だって、ヤキモチを焼いたって言ってくれた。じゃなかったら、淳も私も、お互いに相手の気持ちも知らないまま過ごしていたと思う