澄んだ瞳に
私と智香は、砂浜に座り、サーフィンを楽しむ淳とお兄ちゃんを見ていた。
波を捕えてる彼らは、すごく無邪気で、今を楽しんでいる。
その姿は、17歳の私と何ら変わらない少年のようだった。
淳が私に、『お前は背伸びをしなくてもいい、俺がお前の視線に合わせるから』って、言ったのは、きっとこういうことを意味していたのだと思う。
私は、まだ経験もしたこともない、24歳の淳に合わせなきゃいけない…、そればかりが頭にあった。
でも淳は、6年も前に、17歳を経験している…
年の差は決して縮まることはないけれど、私がこれから年を取っても、淳はいつだって、私の年に戻れる人なんだと思った。
私が、そんなことを考えてると、智香がポツリと言った。
「9月になったら、しばらく悠哉さんと逢えなくなるんだね……」
私は、その言葉を聞いた瞬間、智香の方を見た。
目では、お兄ちゃんを追っていたが、心はここに在らずという感じだった。
いつだって淳に逢うことの出来る私は、その時の智香に、何を言ってあげれば、いいのかわからなかった。
でも、これだけは言えた。
「お兄ちゃんも、智香と同じ気持ちでいるよ……」
すると、智香は、お兄ちゃんを見つめたまま、うん。と言った。
「彼女たち、ここで何してるの?」
いきなり、後ろから声がして、私たちは振り向いた。
二人組の男の人がいた。
私と智香は、目を合わせ、確かめ合うように、うん。と頷き……
『私たち、「ここで、彼氏を見ているんです…」
男たちは、「チェッ、先約済か…」と、言って、去って行った。
私たちがナンパされているのを、見ていたのだろう…
淳も、お兄ちゃんも、二人揃って、波から落ちたのだった…
私たちは、声を上げて笑った。
そして、淳たちに手を振った。