澄んだ瞳に
不思議なあの人
すぐに家には、入らずに、ずっと見ていたが、そのうち赤いテールランプが見えなくなった。
あっ!そうだ!
智香に電話しないと……
鞄の中に入れてある、携帯電話を手探りで探しながら、玄関へと向かい、ドアを開けた。
「ただいま〜」
「おかえり〜。澪、ご飯食べるでしょ〜?」
リビングから、ママの声がした。
「食べるよ〜。でも、ちょっと智香に電話しないといけないから、後で食べるね〜。」
「……さっきまで、智香ちゃんと一緒じゃなかったの〜?」
「一緒だったよ〜。」
と、言いながら、私は洗面所で、手を洗い、2階の自分の部屋へと向かう。
「じゃ、先に食べてるわよ〜。」
「うん、いいよ〜。」
部屋に入って、電気をつけて、すぐに智香に電話をかける。
ピッ、ピッ、ピッ、…
プルル- ガチャ
ワンコールだった
私からの電話を、まだか?まだか?と待っていたのがすぐにわかった。
「澪、あんた、何もされなかった?」
智香の第一声…
「何もされなかったよ。」
「私、心配でさ……、もう少し待ってみて、澪から電話がかかってこなかったら、警察に連絡して、捜索願い出そうと思ってたんだよ。」
捜索願いって……
「大袈裟だよ〜、智香」
私は苦笑いした
「大袈裟なんかじゃないよ〜。二人きりの状態で、何かあったらって思うでしょ?あんた一人だったんだよ?車が発車して、車のナンバー控えたんだから……」
車のナンバーを控えたんだ……
智香らしい……
「ちゃんと家に着いたから、こうして智香に電話出来てるんだから、安心して…」
「そうだよね? わかった。澪が無事だとわかったら、急にお腹が空いてきたよ〜。」
「アハハ、智香、まだ食べてなかったんだ?」
「当たり前でしょ?澪のことが心配で、お茶すら喉に通らないよ〜」
「ほんとに大丈夫だから、ご飯食べて? 私も今から食べるね。」
実は、私もお腹がグーと鳴った。
家に着いた安心感と、智香に無事なことを伝えられたと思うと、急に現実に戻ったかのように、空腹を感じた。