澄んだ瞳に



なんで、あの人に頭下げたんだろう……



顔見知りにも、挨拶代わりに一礼をすることもある。

また、すみませんでしたという意味を込めて、一礼をすることもある………


でも、あの時、明らかに私たちではなく、私たちの後ろにいた、あの人に向けての一礼したのだった。


やっぱり、顔見知り……




「……澪、聞いてる?」



私がいろいろ考えてる間、智香が、喋ってたはずだが、私の耳には届いていなかった。



「あっ、聞いてるよ〜」


適当に返事をした……



「私が車から降りた後、何か会話なかったの?」



「……会話?」


またまた記憶を辿る。



「…………あっ、名刺を渡された。」



「名刺……?」



「そっ……」



「それで……?」



「何かあったら、連絡してこいって。また助けてやるからみたいなことを言っていたと思うよ……」



「名刺には何て書いてあったの?」



「ちょっと待って。名刺見るから……」



私は、鞄の外ポケットに入れた名刺を取り出した。






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