澄んだ瞳に
私たちが下りる駅は、終点の駅……
いろんな路線の電車が入り交じる駅……
3日前に、あの人に逢った場所の近くの駅……
電車を降り、改札を出ると映画館へ向かって歩き出した……
「日中だからといって、油断は禁物だね……。」
智香も、3日前のことを思い出して、警戒していたのだろう。
あの日は、偶然にも矢崎という男の人に助けられて、難無く事を得たが、そう度々偶然が重なることもないだろう……
「……そうだね。気をつけてないとね……」
そんな話をしながら、私たちは映画館へ続く、大通りに面した道を歩いていた。
街路樹として、均等に銀杏の木が植えられていて、生い茂った銀杏の葉が、夏の照り付ける太陽を防いでくれて、心地よい涼しさを醸し出していた。
映画館手前の大きなビルの前に差し掛かった……
「お気をつけて。いってらっしゃいませ。」
数名の男の人が、頭を深々とさげた。
「……あ〜。」
見送りを受けていた、男の人が、車に乗り込もうとしていた。
「……澪! あの人!!」
智香が突然立ち止まり、指を差した。
私も立ち止まり、智香が指を差す方へ、目を向けた。
「……あっ!」
二人は顔を見合わせた…
「『あの時の……?』」
矢崎 淳
と、名乗る、私たちを助けてくれた人だった……