澄んだ瞳に
それから、二人で湖のほとりを散歩した。
矢崎さんは、自分の手を私の手に絡めてきた。
恋人繋ぎ……
散歩の間、何の会話も交わされなかったが、矢崎さんの手から、優しさが伝わってくるようだった。
「澪、腹空かねぇか?」
「……空いた。」
そして、矢崎さんがここに来た時には、いつも行くという、お気に入りのお店に連れて行ってくれた。
それは、小さなログハウスで、20年前に脱サラをして、店を始めたというご主人と、奥さんの二人でやってるお店で、オムライスが、自慢の店だという。
お店に入ると、奥さんが迎えてくれた。
「あら、坊っちゃん、いらっしゃい。」
と、奥さんが言った。
坊っちゃんって言われてるんだ、矢崎さん。
フフッ 可愛い〜
「今、可愛いとかって、思ってねぇ?」
……へっ?
何で、わかるの?
「おばさん、その坊っちゃんって言うの、止めてくれねぇ?俺、今年25になるんだぜ〜。」
今年、25歳?
だったら、お兄ちゃんと一緒なんだ。
「あらあら、可愛い彼女の前だと、恥ずかしい?」
と、言って、奥さんはクスクスッと笑った。
「でも、坊っちゃんが女の人を連れて来るのは、初めてね〜?」
と、奥さんが言うと、
矢崎さんの顔が、ポッと赤くなり、照れているようだった。