澄んだ瞳に
「はい!お待たせ」
オムライスが運ばれてきた
私は、慌て涙を拭いた。
すると、奥さんが
「だ〜れ…?可愛い彼女を泣かせてるのは?」
と、言いながら、矢崎さんの顔を、覗き込んだ。
矢崎さんは、すっと立ち上がると、厨房から様子を見ていたご主人を、手招きして、呼んだ。
「……何だい?坊っちゃん」
ご主人が、尋ねた。
すると、矢崎さんが、私の横に来て、私の肩に、そっと手を置いて、言った。
「おじさん、おばさん、俺の妻になる人です。」
と、言った。
彼女と紹介するのではなく
妻になる人と言った。
顔が赤くなるのが、わかるくらい、体が熱くなった。
「そうですか……坊っちゃんは、幸せもんだぁ……」
と、ご主人が言った。
「ほんと、そうよね?坊っちゃん、おめでとう。」
奥さんが言った。
矢崎さんは、物凄く照れていた。
「そうと決まれば、乾杯しねぇとな!」
ご主人は、ワインを持ってくるように、奥さんに目配せをしたが、矢崎さんは、やんわりと、断った。
「お二人のお気持ちは物凄く嬉しいですが、今日は泊まりじゃないし、こいつもまだ未成年なんで、正式に決まったら、二人で報告にきます。」
「じゃ、その時まで、取っとくか!そのための取って置きって言うんだもんな……。」
と、言い、ご主人は笑った。
二人で、オムライスを食べた。
私にとって、生涯忘れられない思い出の味となった。
そして、店を出て、ロッジに戻り、車に乗り、家路へと帰った。
朝来た時とは、逆に流れる景色を見ながら、私は幸せの余韻に浸った。