LOVE IDIOT
文化祭まで三日・・・
一応、台詞は全部憶えたんだけど。

演技が上手くできないというか。



涼が上手すぎてやる気がでないというか(汗)。



「次、王子と姫のシーンいきます!」

「はい」

「うっす!!」

台本を華に渡して、私は床から立ち上がった。

「じゃあ次は君がシンデレラと舞踏会で踊るシーンだから、上手くやってね」

え、踊るシーン!?
い、一番嫌いなシーンきた・・・

「は、はい」

「んじゃ位置について・・・スタート!!」



深呼吸。
深呼吸―――――・・・。



私は手を差し出す。

「『お美しいお方、どうか僕と一曲踊ってもらえませんか?』」

「『で、でも私なんかと・・・?』」

「『一曲だけ、お願いできませんか?』」

「『わ、私なんかで良ければ・・・』」

クラスに流れる音楽。
ゆったり、ゆったり。

私は涼の手をとる。

私の足と、涼の足が同じ方向へと動く。
背は涼の方が高いけど、私は頑張って背伸びをしながら踊った。

「(大丈夫、宮比?)」

踊りながら涼は私にささやいた。
ち、ちょっとドキっとしてしまった。

「(涼が背、高いからだよ?)」

そう、笑顔で言ってやった。

くるっとワンターン。
涼が履いているヒールが静かに鳴る。





グラッ





「(わっ)」



こ、転ぶっ・・・



くるっ
グッ


「ぅおっ!?」

急に涼が私を床に近づけた。
っていうか、このポーズ・・・本当は私が涼にしないといけないんじゃ・・・

「『ぉ、お上手ですね・・・』」

「『王子ほどではないですわ』」

すると涼は私を引き上げた。
む、無重力・・・

「(あ、ありがと)」

「(ん)」


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