LOVE IDIOT





ガラッ





『ようこそ、滝の宮旅館へ』



「ただいま」

「(た、ただいまっ?!)」

両脇には沢山の着物を着た旅館の女将みたいな人達がいた。
あ、女将は一人だけか。

「す、凄い・・・」

「来て良かったね宮比!」

「う、うん」

そして未だに私はお姫様だっこ。
いい加減降ろして!!





ダダダダダダダダダッ





「(なに!?)」




「・・・涼おぼっちゃまああああぁぁっ!!!」




「「「(『涼おぼっちゃま』っ!?!?)」」」

急に現れたこのおばさん、もの凄い勢いで走ってきた。
し、失礼ですが・・・おいくつですかっ!?

「美十理さん。久しぶり」

「りょ、涼おぼっちゃま・・・帰って来るならちゃんと前日に連絡入れといて下さいよっ!」

「美土里さんを驚かせたいんだよ」

「ですけど・・・あら!」

「(え?)」

その美土里さんという人は、私達をジロジロ見始める。
ご、ごめんなさいお姫様だっこなんかで登場してしまって(いや、私も好きでやってるわけじゃなくて)。

「この子、もしかして・・・あ!!!早瀬さんのところのっ!!」

「(わ、私を知ってる?)」

「憶えてる?宮比だよ」

「あーあー!!そりゃあもう!憶えてるだなんて、昔良くいらっしゃいましたねっ!」



え、なに私来た事あったのっ!?



「何年ぶりでございましょうか・・・いやぁ、大きくなって」

「まだ子供だけどね」

「おい!(なんのつもりだ!!)」

「あらあら、気の強い子になられたらしいですね(にこ)」

「あ、どうも・・・」

お陰さまでもう男前呼ばわりですよ(泣)。
美土里さんは名簿に『涼ぼっちゃん』と書いて、私達の荷物を他の従業員に持たせた。

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