LOVE IDIOT
第三章

境界線の傷

記憶と存在とその理由。

淡い風が君をなびかせ、
私の涙を奪い去った。

髪が揺れて、太陽を反射する。

指からは血、爪からは道しるべ。

連れて行ってくれるのならば。
靴のヒモが解けた、木々が騒ぎ出す。

止めどなく、夏は現れる。


 LOVE IDIOT
  境界線の傷


「んー・・・」

私はふとんから目覚める、隣には。

「・・・」

涼は―――いなかった。
別に意識もしてないし、望んでもいない。

これが、いつもの朝。

「・・・はぁ」



チュンチュン



「(スズメ・・・)」

・・・昨日は、本当に長い一日だった。
いっぺんに三日ぐらい圧縮して入ってる感じがする、もしかしたら一日じゃなかったのかも。

あー、今日は花火だー。

「(起きよ・・・)」





「おはよう宮比」





「ぇ、え・・・へ?」

・・・涼いた。

「朝ご飯出来てるよ」

「ん・・・ほ、本当だ・・・」

テーブルを見ると、そこには温かそうなお茶とお味噌汁とご飯とシャケ。
普通に美味しそう。

「涼・・・華と司は?」

「美土里さんの部屋で浴衣を見てもらってる」

私はお茶をひと口いただいた。
日の光が暖かい。

なんだか、平和。

「ん、なんで?ぁ、あっつ・・・」

「今日は花火があるから張り切ってるらしい」

「あぁ・・・(私も後で行こ)」

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