転んだら死神が微笑んだ
わたしたちは、書いてある住所のところへ歩いて行った。

タカシは携帯を使って、地図を表示させ、わたしを誘導してくれた。


あかり「結構、貴志って携帯活用してるんだね。」

貴志「え？これくらいフツーだよ。お前があんまし携帯使ってねーだけなんじゃね？」

タカシはクルクルと携帯を回転させながら、わたしにそう言ってきた。

あかり「あ、そっか。」

これが、フツーか。

クルクルしている姿が、妙な感じがしたけど、わたしが今まで使いこなせていなかっただけか。



ドンッ

曲がり道を曲がったところで、タカシが誰かとぶつかった。

タカシは両手で携帯を持ちながら、画面に注意しすぎていたので、完全にコイツの前方不注意だった。

貴志「あ、すいません。」

男の人「気をつけろ。」

ぶつかったのは、男の人だった。

ただその一言注意すると、男の人はタカシの前をすぎていった。


闇から浮かび上がるその人の格好がだんだん視界に入ってきた。

黒いシャツに黒いズボンを着て、サングラスをかけていた。

その男の人の声は、どこかで聞いたことのあるような声だった。

けれど、それはちょっとはっきりしていなくて、誰なのかわからなかった。


こっちに近づいてくる男の人の手元が見えた。

革手袋をはめていて、片手にかばんを持っている。

わたしはそのかばんを見た瞬間、その男の人の正体がわかった。

かばんを持っているあの人の光景がつぎつぎとわたしの頭をかけめぐる。

その男の人は、わたしに気がつくと立ち止まった。
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