転んだら死神が微笑んだ
そこには、倒れているわたしと倒れているおじさんが二人いるだけだった。

山田「まったく、なんて奴だ。こんなところにいたいけな少女をほったらかしにして。」

起き上がって、服をはたきながら、おじさんはわたしのほうを見た。

山田「だが、悪いな。俺もお譲ちゃんの相手をしているヒマなんてないんでな。」

かばんを拾い上げ、立ち去ろうとするおじさんをわたしも起き上がって追いかける。

あかり「待って!おじさん。」

おじさんは、わたしのほうを振り向こうとはしない。

あかり「どうして、人殺しなんかするのっ!?」

すると、おじさんが振り返ってこう答えた。

山田「ただのひとりよがりさ。俺の勝手な行動だ。それ以外のなにものでもない。」

おじさんの目はわたしにまっすぐと向いている。

わたしにはその言葉がなぜか嘘に思えた。

なんで嘘なんて思ったのかはわからない。

ただ、なんとなくそのみつめる目がかなしく見えて。
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