転んだら死神が微笑んだ
そう言ってから、山田のおじさんは固まっていた。


そして、構えた銃をおろした。

山田「小僧。いい加減、動けるよな?」

貴志「え?…。あ、ああ、動けるようになってる。」

タカシは両手を何回も握り返しながら、起き上がった。自分が動けなくなっていたのも忘れて。

山田「さっさと、お譲ちゃんを連れて、遠くへ行け。」

あかり「山田さん!」

貴志「あかりっ。」

タカシは駆け寄ってきて、わたしの目の前にたった。おじさんの姿が見えないように。

山田「ガキが見るもんじゃねぇ。」

あかり「でも、でも、そんなことしたらダメだよ!おじさんっ!」

貴志「あかり。」

あかり「奥さんも、娘さんも、そんなこと望んでなんかないっ!おじさんには、いい人でいてもらいたいに、決まってるじゃない!!フツーに笑って、生きてほしいに決まってるじゃないっ!!」

貴志「あかりっ!!」

コイツはわたしの肩を強く揺らして、わたしにこれ以上しゃべらせないようにした。

山田「俺は…もう死んじまってる。二度もな。一度目は、復讐を誓った時。二度目は、坂口をターゲットに選んだとき。」

あかり「それって、どういうことなの?」

貴志「行くぞ!」

わたしは、タカシに抱きかかえられるようにして、連れていかれた。

止めたかったのに。

できれば、二人とも助けたかった。

でも、できなかった。
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