転んだら死神が微笑んだ
アナウンサー「それでは、最初のニュースです。本日、最新の精密部品の完成が発表されました。この部品は、従来のものとは異なり、様々な製品に活用されることが有望されており、世界からも注目を集めています。この発表会には日本のメディアだけではなく、世界各国の多くのメディアが駆けつけ、盛大に行なわれました。」

あかり「え、もしかして坂口さんの作った部品?」

アナウンサー「開発者の坂口康博氏は、インタビューに次のように答えています。

坂口康博『今回、私の開発した部品が、このように世界から注目されることは大変光栄に思います。
しかし、このように世界のメディアの方々に集まっていただいたので、ここでひとつ私から申し上げたいことがございます。
この部品には、私の夢が詰まっています。そして、これを使うことにより多くの製品が生まれるという希望があります。
ですから、この部品を戦争のための道具にはしたくありません。お願いですから、これは良いことのために使ってください。
この部品が、世界の人々の笑顔につながることを私は望んでいます。』

アナウンサー「坂口氏はこのように述べ、会場では大きな拍手がわきおこりました。」

あかり「そっか…。坂口さん、助かったんだ。」

アナウンサー「速報です。ただいま、七瀬 晃容疑者の身柄が警察病院から警視庁に引き渡されました。七瀬容疑者は、先日逮捕された子安賢一郎容疑者の関与する件に深く関わっていると見られ、今後の取調べや捜査に大きな展開が期待されます。」

画面に映っている容疑者の顔写真は、山田のおじさんだった。

“山田”っていうのは、偽名だったんだ。

映像が切り替わり、おじさんの顔が映し出された。

おじさんの顔は、とても穏やかに見えた。

何度も見たあの冷たい顔はしていなかった。

おじさん、撃たなかったんだ。


そのあとすぐに、貴志から電話がかかってきた。

貴志「今から、公園に来いよ。」

あかり「あ、うん。」
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