転んだら死神が微笑んだ
貴志「し、仕方ね〜な。もうこれ以上、迷惑かけられんのはイヤだから握っといてやるよ。」

あかり「ざ、雑に扱わないでよ。」

それからタカシは、わたしの手を離さなかった。

タカシはびっくりしてもいいようになって言っていたけど、そんな握られたんじゃびっくりとかしてる余裕なんてない。

冷たい室内の中で、温かい手のぬくもりがずっと感じられている。

そのぬくもりが感じられなくなったのは、そう前から光がもれ出ていた出口。

ああ〜、もう終わりか…。

なんか、もうちょっと感じていたかったかな…。

光がこんなにも、うとましく思えるなんて、起きぬけの朝くらいなもんだ。

この安心感がなくなってしまうのが、とても不安だ。

貴志「やっと出口か。建物が小さかったから、すぐ終わるだろうって思ってたら、案外長かったな。建物自体がミステリーだな…。」

ホントに長かった。

あかり「うん。」

貴志「…あ、悪ぃ。」

返事をしたとき、じっと手を見ていたから、タカシはパッとその手を離した。
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