転んだら死神が微笑んだ
貴志「のど渇いたなぁ。」

あかり「そうだね〜。なんか飲む?」

貴志「うん。じゃあ、俺買ってくるよ。ジュースでいい?」

あかり「うん。」

ふぅ〜。近くのベンチに座って、タカシを待った。

他のみんなは、何やってるんだろ?

同じ空間内にいるはずなのに、遊園地とは不思議な場所だ。

すぐに誰かがいなくなってしまう時がある。


ピンポンパンポーン


今もこうして、誰かが迷子になっている。

考えてみたら、わたしも迷子かもしれない。

こんなとこで一人座って、ため息をついている。

みんな楽しそうに笑って歩いているというのに…。

でも、今は不安を感じない。

貴志「おまたせ。はい。」

あかり「ありがとう。」

コイツがわたしを捜してくれるから。


貴志「はぁ〜、うまい。」

あかり「そろそろ、みんなのとこ戻ったほうがいいんじゃない?」

貴志「そう?…なんか、最後乗らない?」

あかり「『最後』って、まだもうちょっと乗れそうだよ?」

貴志「『二人』は最後だろ?」

あーそっか。なるほど。

うまいこと言うなぁ。

腕時計を見ていたわたしは、顔を上げて周りを見た。

大きく目立つ観覧車が、ゆっくりと動いている。
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