スワローテイル・バタフライ
ドキッ。
まただ…
あたし…お兄さんの顔がまともに見れない…。
意識すればするほどに熱は更に上昇して、顔だけと言わずそれは身体全体に広がっていく。
「お前なんか顔赤くね?」
「あっ…赤くなんてないよっ!!な、なに言っちゃってんの!?」
明かに挙動不振で怪しい態度。
これじゃどんなに鈍感な奴でも気づくだろう。
でも自分自身、一番戸惑っていたのも事実だ。
信じられなかった。
一目見た瞬間に相手を好きになるなんてありえない。
お伽話じゃあるまいし、そんなの幻想に決まってる。
そう思ってたのに…
この出会いが一瞬にしてあたしの持論を根底から覆したのだ。
「兄貴何飲む?いつものでいい?」
「あ、俺いらない。ツレ待たせてるんだよね」
お兄さんはダルそうにポケットから取り出したタバコに火をつける。
「ツレって綾乃さん?」
「ぶー」
「じゃあミチルさんだ」
「残念ー」
「わかった!未央さん!」
…遊び人なのかな…。
そう思わざるを得ない会話だ。