スワローテイル・バタフライ
「俺さ、一人暮らししたくて。バイトしたいんだよね」
「一人暮らし!?何で!?一人暮らしなんて絶対寂しいよ!!帰ってきても誰もお帰りって言ってくれないんだよ!?」
「…落ち着けって。心配してくれるのは嬉しいけど、俺んちあんま親と仲良くねーし。いちいちグチグチ小言いわれんのがスゲー嫌なんだわ」
「………そっかぁ」
確かに、家庭の事情はそれぞれだよね。
ウチも親は厳しい人だから結構グチグチ色んな事言われるけど…
それでも何だかんだ楽しい家族だし。
離れて暮らすなんて考えもしなかった。
でも、浩太は違うんだなぁ…。
「創は?」
「俺はサッカーやるよ。せっかくだからもう少し青春とかやってみちゃおうかな、みたいなね」
「で?そういう唖蝶(あげは)はどーすんのョ?」
「あたしもやるよ。テニス」
「お。さすがテニプリ」
「その呼び方やめてよっ」
テニスの王子様ならぬテニスの王女様。
あたしは中学の頃、影でそう呼ばれていたらしい。
「ねね創っ、浩太のバイト決まったら冷やかしに行こうねぇ!」
「おっ、ソレいいな!」
「はぁ?ちょー迷惑っ。おまえらは出禁だ出禁!」
そう…
最初はそんな些細な変化だった。
あたしはこの時、確かに普通の女子高生で
どこにでもいるような女の子だったのに。
いつから道を間違ってしまったのだろう。
大人になって
ふと、自分が今までしてきた事を振り返ってみても
後悔しているのかどうかさえ、分からない。
ねぇ、もしも。
未来が分かっていたのなら…
あたしはその手を取らなかったのかな?