スワローテイル・バタフライ
act.3
【接近】
「あれぇ?今日は亜蝶ちゃん一人なの〜?」
ドキッ。
この店に来た最大の理由であるその人の登場で
あたしの心臓は一気に最高のテンションで踊り出した。
「こ…こんばんは!!」
龍輝さんはにっこりとあたしに微笑むと
「なぁ、ちょっとタバコ買ってきて」
と後ろにくっついていた派手な女にお使いを頼む。
女ははぁ〜いと面倒臭そうに返事をするとコンビニに出かけて行った。
「タバコならウチで売ってんのに」
「や、ちょっと亜蝶ちゃんと話そうと思って」
浩太がボトルラックの引きだしからマルメンを取り出すと、龍輝さんがそう言いながらあたしの隣の席に腰を下ろした。
「あの…さっきの人…彼女ですか…?」
「違うよー?俺彼女いないもん」
「そっ…そうなんですか!?」
「んー違った。“いらない”が正解かなー」
ガーン…。
い…いらないって…
あたし告白する前に失恋!?
「あ。浩太、俺今日ワインにしといて」
「え?珍しく保守的じゃん。どしたの?いつもはスピリタスとかいっちゃってるくせに」
「明日朝はえーんだよ」
あたしは龍輝さんをチラリと見遣る。