スワローテイル・バタフライ
あたしはしばらくの間龍輝さんとの密室で行われるめくるめくスウィートな一時を妄想しながらむふむふとにやけていた。
しかし幸せだったのもつかの間…
「買って来たよぉ〜」
買い物を済ませ、戻ってきた女の声であたしは現実に戻される。
「じゃあ亜蝶ちゃん、またね!」
「あ…はい…」
明かに下がって行くテンション。
龍輝さんは女を連れて奥の席へ移動してしまったのだった。
「龍輝さんてあーゆー女が好みなわけ〜?」
楽しそうにいちゃつく二人をじっとりとした目で見ていると
「あんま見るな。気づかれるぞ」
と浩太に怒られてしまった。
「なによ。浩太はどっちの味方なの!?」
「味方もなにも…」
あんな誰にでもくっついて行きそうで頭悪そうな女の何がいいの!?
彼女じゃないならベタベタすんなっつーの!
完全に嫉妬剥き出しの八つ当たりだが、一度思い出したらそれはなかなか止まってはくれない。
「浩太!あたしにもお酒頂戴!!」
「え…なんで急に?」
「あたしにだってねぇ…飲まないとやってらんない時くらいあるんだからっ!」
「でも…おまえ酒飲めねんじゃねーの?」
「飲める飲めないの話じゃないの!」
「は!?意味わかんねーし!!」
「ここはバーなのにお酒出さなくて何を出すってゆーの!?」
「わ…わかったわかった!で、何飲むの」
「……お任せで」
生まれて初めて飲んだお酒は
やけに苦みを感じた。
あたしの醜い嫉妬心が…
そこへ溶けだしてしまったかのように…。