スワローテイル・バタフライ


「お…おい…?」


決しておいしいものじゃないけど

止まらない。


勢いよくグラスの中の液体を胃の中へ流し込むと、流れ込んだ部分がカッと燃えるように熱くなって、なんだか頭もふわふわしてきた。


気持ちいい。

楽しい。


今なら空も飛べる気がする。



じっとしていられなくなって、何気なく立ち上がったあたしはフラフラとおぼつかない足で後ろの席まで移動し、いつの間にかどさくさに紛れて龍輝さんに抱きついていた。


「たーつきさぁん♪」

「えっ…」



ペアシートなのに無理矢理三人入ると流石に窮屈感は否めない。



「ちょっと何よこの子!?」



連れの女は気分を害したらしく、あたしを思い切り睨みつけた。


しかし今のあたしはそんな事じゃ怯まない。


空さえ飛べると思っているこの瞬間は言わば無敵だ。


「亜蝶!お前なにやってんだ!ハウスっ!!」


浩太が慌てながらあたしを龍輝さんから引き離そうと必死に腕を引っ張るが

あたしはどうしても離れたくなくて


「嫌ぁぁだぁぁ!!あたしここにいるのぉ!!」


と小さな子供みたいにだだをこね始める。


「亜蝶ちゃんちょっと飲み過ぎちゃった?」


困ったような顔をして笑う龍輝さん。

ポンポンと優しく頭を撫でてくれる。



――なんて…天使のような人なんだろう。



天使なんか見たことないけどそう思った。


だって…もしも自分が龍輝さんの立場だったら

間違いなくウザい顔をしていたに違いない。



やっぱりこの人は…

あたしの運命の人だ!!
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