スワローテイル・バタフライ


「俺は心配してんの!あいつ…今までほんとに恋愛経験とかなかった奴だから、ハマると前が見えなくなっちゃいそうじゃん…?」

「…まぁ、そんな感じするわな」

「兄貴がやる事に一々口だしするつもりはねぇけど…

亜蝶は…

あいつだけは巻き込まないでやってくんねーかな…」


滅多に頼み事なんかしない俺の真剣さを汲み取ってくれたのか、兄貴は言う。


「…わかってるって。心配すんな」


何処か寂しそうに

笑いながら。





カチャッ…。


兄貴が帰った後、俺はバックルームに戻って亜蝶の様子を見に行った。



…散々迷惑かけといて

幸せそうな顔して寝てるよ、このお姫様はよー。



「はぁ…」

幸せそうな亜蝶の寝顔を見ながら溜息をつく。



亜蝶が恋した男は

弟の俺が言うのもなんだが、超がつくほどの危険人物で。


出来れば関わって欲しくないと思う人種の一つだ。

でも、だからと言って別に兄貴を嫌ってるわけでも軽蔑しているわけでもなく…むしろ、兄としては尊敬している。

冷めきった家庭の中で唯一頼れる存在。

それが兄貴だった。



俺と違って分け隔てなく愛想がよくて、誰にでも好かれる兄貴。

いつだっただろう…

その無邪気な笑顔の裏に気づきはじめたのは…。
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